エクステリア&ガーデン 【 デザイン考 】

 
 機能的で心地良い『エクステリア空間』とは?、『エクステリア空間』がもたらしてくれるものは?etc・・・。
ここでは、空間の表現手法としてのデザインの重要性と、人との関わりについて考察してみます。
ずはじめに

 日本における住宅を取り巻く環境は、昭和から平成へと凄まじいスピードで変化をし続けてきました。
「軽薄短小の時代」と言われた過去の大量生産・大量消費時代が終焉し、その後のバブル経済の崩壊をきっかけに、「何が自分にとって有益か?」を日本人として考えるようになりました。 つまり、自己の価値観や生活観を見直す、いわゆる「個」が優先される時代になったと言えます。 言い換えれば、生活様式から求めるモノの「カタチ」まで、自分にマッチするモノだけを求める時代になったということです。
「住めれば良い」から「どのように住むか」・・・という尺度で進化してきた住宅と同じく、今や『エクステリア空間』も同じ進化を辿りつつあります。 このコーナーでは「自分に合った『エクステリア空間』とは何なのか」、「『エクステリア空間』に何を求めたら良いのか」など、デザインとの関わりを中心に考えてみたいと思います。
 
 
 

クステリアにデザインは必要か?

 『エクステリア』デザインを論ずる前に、そもそも『エクステリア』とは何か?を定義する必要があります。
広義としては、住宅の外部空間において人の手で造形されたすべてのものを『エクステリア』と呼びます。 いわゆる「家」の内部を『インテリア』、「家」の外を『エクステリア』と考えるとわかりやすいかもしれません。
 『エクステリア』にはさまざまなものがあって、例えば、塀やフェンス、アプローチやウッドデッキからカーポートや植栽・庭園ライトetc・・・にいたるまで非常に広範囲に及びます。(「家」周りにある造形物すべてが『エクステリア』空間なのですから、当たり前ですよね。) 私達と『エクステリア』との関わりを考えた場合、誰しもどこかで必ずこれらに接して生活しているものです。 つまり、私達は自分の好き嫌いに関わらず『エクステリア』空間の中で移動・活動し、同時にそれと密接に関わっている・・・。 じつは『エクステリア』は私達にとって、とても身近な存在なのです。 だからこそ、『エクステリア』空間それ自体が、私達の生活空間そのものだと言える所以なのでしょう。
 そういう意味においては、『エクステリア』空間が私達に及ぼす物理的・心理的な影響は決して小さくはありません。 その空間の出来・不出来により不快感を憶えたり、落ち着かなかったりすることもあるでしょうし、逆に爽快感や安らぎを感じることもあるでしょう。 それは『エクステリア』空間を形づくる構成要素そのものの「素材」や「カタチ」「色」「配列」などに起因するからであり、それぞれの質とバランス感覚が私達に大きな影響を与えるているといっても過言ではありません。
また、たとえいくら素敵なモノであっても、好き勝手にあるいは雑然と配置してしまったのでは、そのものの良さが十分に伝わらない場合もあります。 また、魅せられなかったり、使い勝手が極端に悪かったりすると、逆に不快感を感じさせてしまうだけでなく、ややもすると煩雑ささえ感じてしまうのはそのためです。 なぜなら、人間の「動き(=動線)」と「イメージ(=心理)」というものはデジタルではなくアナログであるために、その全体像を一見したときの「なんとな~く」という居心地感が、私達の五感に対してとても大きな影響を与えるからなのです。
現在では、この「居心地感」というものが『エクステリア』には欠かせない要素である・・・と一般的に考えられています。 そのために、昨今の狭隘な都市住環境(北海道内は例外かもしれませんが)においても、その点を良く考えて設計しなければならないでしょう。
 
 以上のことから、『どのようにしたら狭い敷地を広く・居心地の良い空間にできるのか?』―この難問を解決するために取り入れられたのが『エクステリア・デザイン技術」なのです。
人の動線やイメージを阻害することなく目的の空間をつくり、同時に視覚的な広さや居心地感を確保するような素材や配置、形状・形質がエクステリアの構成要素に求められます。 なぜなら、それが実現されたときに、初めて「心地よさ」を感じさせてくれるからなのです。
 
 他方、エクステリアに「デザイン」感覚が必要だと言われる理由はもう一つあります。 じつは、エクステリアを「デザイン」するということは、すなわち周辺環境に配慮した街区を設計することと同じことなのです。 なぜなら、各戸のエクステリア空間が周囲から魅力のある生き生きとした空間になれれば、街全体が魅力のある地区に変わり、そこに住まう人の生活を潤いと活力あるものに変えてくれるからなのです。 同時に、程良いデザイン感覚を持つ「エクステリア」と住宅との一体感が生まれることで、美しい街並みを形成し、良好なコミュニティーも生まれるはずです。 
こういった理由からも、建築物と外部空間の程良いバランス感覚は、私達が暮らす都市環境にも非常に大きな影響をもたらすと言えるでしょう。
 
 
 

クステリア計画に必要なポイント

 昨今のエクステリアデザインには、限られた空間に対して無計画にあれもこれもと思いつくままにつくってしまうのではなく、ある一定のルールによって合理的に設計することが求められます。 なぜなら、それによってデザインや機能性の統一感が生まれ、結果的に心地良さを演出できることに繋がっていくからなのです。 そのためには、まず住宅周りを一定の基準(例えば、機能的基準や使い方の基準など)により、グループに分けて間仕切り(これを専門用語で「ゾーニング」と呼びます。)、そのゾーン毎にエクステリアの構成要素を組み入れたり、イメージやテーマを設定します。 このレベルになると少々専門的になりますが、一例を挙げながら説明します。
 
  まずは、エクステリア空間を仮に3つのゾーンに分けてみましょう。
①ファサード空間(門周りやアプローチなどの正面の外観ゾーン)
②サービス空間(内部の庭やアプローチ、駐車スペースなどのコミュニティーゾーン)
③景観・街並み空間(照明や色彩などのイメージゾーン)
 
この3つのゾーンに入る構成要素としては、①には門・塀・アプローチ(形状も含む)・駐車スペースなどが挙げられます。 同様に、②にはアプローチの動線および段差・駐車スペースの広さ・ガレージ・主庭・バックヤード(裏庭)などとなり、③にはプライバシー感・フェンス・塀・ライトの数や位置や光量・全体の色彩などが挙げられます。
しっかりとしたゾーニングができましたら、次にそれぞれの細部に当てはまる構成要素をゾーン毎にはめ込んで個別的・全体的にデザインしていくのですが、この段階になると、ある程度経験豊富な専門業者でなければむずかしいところかもしれません(この辺を説明するには一冊の本が書けるほどになってしまいますから、このコーナーでは割愛させていただきます。)。 ただ、皆様に覚えていただきたいことは、四角いモノ(例えば花壇など)を設置する場合は、動線を阻害するような大きさや配置は避けた方が無難だということ。 同時に、全てのゾーンに圧迫感を与えてはいけないということ。 また、視覚的な広さを実現させるためには、空間内に心理的なデットスペースを設けないことは言うまでもなく、場合によっては意図的に長い動線を設定するということ。 さらに、スペースに進入しにくい場所をつくらないということetc・・・。 
これらは、自分でデザインを考える上でもとても重要なことなので、忘れないでほしいと思います。
  さらに、これからのエクステリアデザイン技術に求められることは、既存の生活空間が、新しいそれとして生まれ変われるような設計概念でしょう。 つまり、今までのように「一つの空間で一つの機能を」といった考え方から、「一つの空間でより多くの機能を」ということが求められるようになるということです。 
そのためには、前述のゾーニング手法を十分に理解し上手に活用しなければなりません。 これからのエクステリア計画には、その点を十分に考慮したいものです。
 
 
 

能とデザイン

 一般論として、機能性を追求するほど、場合によっては希望するイメージとかけ離れていく場合があります。
機能性とはその物体の持つ有用性の意ですが、言い換えれば、使い勝手が良いということです。 もちろん、お庭やエクステリアの設計をする上でも使い勝手を十分考慮することはとても大切なです。 しかしながら、それがすべてではありません。 どういうことなのか、もう少しわかりやすく説明します。
 例えば、ある人が自分の部屋を使い勝手の良いように整頓したとします。 台所では、すべての調味料・料理器具の置き場を自分の手の届く範囲に置き、またリビングではTVやAV機器のリモコンや新聞・雑誌なども同様に手の届く範囲に置くとします。 さらには書斎においては机の上に必要なすべての書類を積み上げて、筆記具なども空いた場所に置くなどの所狭しの状態になります。 いわゆる、引き出しや棚の中にしまうことをせずに、目の前に置いてある状態です。 それらを利用する本人にとっては、非常に機能的に配置されているかもしれません。 
でもよく考えてみましょう! 台所やリビング、書斎を複数の人が利用する場合でも、それが機能的に整頓されていると本当に言えるでしょうか? 自分だけが使う場所といろいろな人が利用する場所とでは、その機能性の高低や質は自ずと違ってくるでしょう。 つまり、複数の人が利用する空間では、①作業面積が広く作業がし易いこと、②作業目的のための材料や道具のある場所が非常にわかりやすい状態で整頓されていること、③その空間が雑然としていない状態で適度に心地良いことetc・・・これらの条件が兼ね備えていることが必要なのです。
 
 お庭やエクステリア空間を考える場合、もちろん使い勝手の良さを十分考慮しなければなりません。 玄関前やガーデンの入り口付近で、BBQ用のテーブルなどを置きっぱなしにすることは通常しないはずです。 逆に、家族でのBBQパーティーなら、お庭のほぼ中心かウッドデッキの周辺で行うでしょう。 でも、出来るならば住宅の出口からある程度近い方が使いやすいですし、お庭の中を歩く場合にも邪魔になりにくい場所であるほうが良いでしょう。 また、BBQパーティーをしながらリビングへアクセスできることも大事ですし、器具などを片付けるための物置の場所も近い方がベターです。 でも、そういうことばかりを考えてばかりいると、やはり玄関前でするしかありません。 これが、極端な機能性重視の考え方なのです。
実際は月に数回程度しかBBQをしないのですから、仮にガーデンテーブルを利用するとしても、窓からの見晴らしの良い場所に設置したり、別の用途でお庭で楽しむ場合にも邪魔ではない場所だったり、外からの景色とマッチする場所にガーデンテーブルを設置することで、心地良さのレベルが変わってくるものです。 これがデザイン性重視の考え方です。
 
 機能性とデザイン性には密接な関連があり、どちらを優位にするかはある意味ケースバイケースです。 私達にとって安らぎや心地良さを演出するためには、それぞれの特性のバランスがとても重要なファクターとなるはずです。 その2つのファクターを理解してこそ、デザイン性が高い、機能的なエクステリアが完成します。
 
 
 

適な空間を目指して

 心地良いエクステリアを実現するために必要不可欠な特性、それが「機能性とデザイン性」です。 これらが屋外空間におけるキーワードであり、これこそが今後の設計に効果的に活かされなければなりません。 物質的にある程度熟成した現代の私達にとって、本当の幸福感を味わうためには、もしかすると無形で個別的な「快適と安らぎ」をどういうカタチで表現できるかにかかっているかもしれません。 そのためには、エクステリアづくりを計画する段階で考えなければいけないことは、決して少なくはありません。
なかでも、快適なエクステリア環境の実現のために必要と思われる具体的な考慮事項を、以下の6つにまとめてみました。
 
①屋外空間でどのような目的で何をしたいのか、②誰と楽しみたいのか、③いつ利用したいのか、④予算はどの位かけられるのか、⑤どのような空間にしたいのか、⑥誰に相談したら良いのか・・・。
 
①〜④については施主様の家族構成や生活習慣、あるいは生活レベルによってさまざまですから一概には言えませんが、特に初めてエクステリアをつくりたい場合にはとても重要なことなので、家族の皆さんで良く検討しなくてはいけません。 また、⑤〜⑥については、しっかりとしたポリシーを持った評判と実績のある業者を選定すべきです。 もしあなたが快適な空間を目指したいのであれば、屋外での生活を楽しむということの意義をきちんと理解している専門業者でなければ、実現することは非常に難しいかもしれません。
良くある失敗するケースとしては、ハウスメーカーや建材メーカーなどの営業担当者にエクステリア工事を安易に依頼してしまう場合です。 多くの営業担当者にとっては、室内(住宅)で住むことのみに価値観を持っており、屋外での生活文化に対する深いポリシーは欠けています。 従って、お庭やエクステリアは住宅を引き立てることにのみ存在する・・・的な発想しかない担当者が、各メーカーや一般工務店には非常に多いと言えます。 この状態は至極残念であり、施主様にとっても大変不幸なことです。 結果、どこでもアルミ二次製品と芝生と数少ない植栽・・・いわゆる「お決まりの空間」になってしまったり、施主様や訪問客の歩くスペースも確保できないまま、玄関前に駐車スペースを設置してしまった住宅などが最近ではとても目につきます。 さらに、ほとんど使えるスペースとは言えない広さのウッドデッキをビルトインさせてしまっている住宅なども本当に多いことも事実です。
 
 では、いったいどうしてそのような状況になってしまったのでしょうか? 答えははっきりしています。 前述したことの繰り返しですが、施主様も業者側も屋外空間での楽しみ方や、問題点を解決するための知識が不足していることに加え、快適な空間づくりのノウハウを持っていないことに起因しています。 しかし、そうは言っても施主様にとって住宅を取得することは「夢」であり、それと同時にお庭やエクステリアを持つことも、同様に「夢」なのです。 そうです、エクステリア(屋外空間)も、住宅空間と同じ生活空間なのです。 それを常に忘れず心がけることこそ、快適空間を実現できる最も近道なのかもしれません。
 
 最後に、願わくばこのコーナーがより多くの施主様の目にとまり、本当の意味での快適空間を手にすることへの一助になれれば幸いです。
 
 
 

考察&執筆   チーフデザイナー  高 坂 英 己